ー浪曲のジャンルを捉え直す
第2回(全5回)ー
浪曲の可能性をジャンルから探る
第2回目の今回は、
世話物、出世物、武芸物
を取り上げます。
今回の題材は、
名前からなんとなく想像が
つきますよね。
でも、
もうちょっとイメージを広げることで、
より馴染み深い題材になります。
それによって、
なんとなく取っ付きにくかった浪曲に、
親しみを覚えるでしょう。
「世話」物
まずは、「世話」物です。
よく誤解されるのですが、
「世話」物の「世話」とは、
面倒をみる
という意味ではありません。
世話の語源は、
「 日常的な言葉 」という意味です。
そこから広がった、
「 世間の人の話 」という意味が、
「世話」物の「世話」のことです。
元々、浄瑠璃や歌舞伎で、
江戸時代の町人社会の日常を
扱ったもの、
それが「世話」物です。
つまり、世間話ですね。
井戸端会議にも通じますよね。
ちなみに、
「世話」という言葉に“面倒をみる”
という意味が加わったのは、
後からです。
「世話」物は、
普通の人の日常を扱ったものです。
浪曲を聞く多くの人にとって、
身近な話題を扱う
ということです。
そのなんでもない日常の、
「 人間ドラマ 」を扱います。
題材は、
その気になればどこでも転がっています。
ですので、
普通の人でも「 創る側 」で楽しめます。
インターネットによって、
誰でも自由に創作を発表できる現在、
「世話」物は、
間口の広い題材といえます。
「出世」物
「出世」物は、そのままの意味で、
「出世にまつわるドラマ」
を描いた物語です。
誰にでも逆境はありますが、
そんな情況をくつがえして
成功する。
「出世」物とは、
そんなサクセスストーリーです。
今でも成功者の物語は人気ですよね。
これも「 流行り廃れのない人間ドラマ 」
といえます。
出世というと、
昇進するとか偉くなるとかいう
イメージがありますが、
出世するとは呼んで字のごとく、
「世に出る」ことです。
つまり、
何かを為し遂げることによって、
「 世の中に名前が知られること 」
です。
昔は今ほど
メディアが発達していませんので、
世の中に名前を知られることは偉くなること
だったのではないでしょうか?
出世は、通常良い意味で使われますが、
「 悪い意味で名前が知れ渡る 」
こともありますよね。
その場合も、
「 その世界 」で出世したといえます。
(誇ることではないにせよ)
「 出世魚 」と呼ばれる魚や
故郷に錦を飾るという言葉がありますが、
「 立派に成長する 」ことは、
人間の動物的本能でもあります。
「出生」物は、
そんな本能を満足させる物語
といえそうです。
「武芸」物
「武芸」物とは、武士の物語です。
今でも歴史小説は人気です。
その中でも輝いているのが、
武士の物語です。
西洋でも、騎士の物語は人気ですよね。
もうちょっと範囲を広げると、
ファンタジーというジャンル
に行きつきます。
こちらは、空想のお話ですけどね。
ファンタジーといえば、
『 指輪物語 』の影響が大きいですよね。
その『 指輪物語 』に影響をうけて、
『 ダンジョン&ドラゴンズ 』という
ロールプレイングゲームが誕生します。
その後、日本では
『 ドラゴンクエスト 』などが生まれ、
今では多数の、
オンライン・ロールプレイングゲーム
があります。
ロールプレイとは、成りきることですので、
物語の主人公として、
物語の中に入り込むことです。
浪曲では、浪曲師の体を使って、
登場人物に成りきること
もできます。
浪曲によって、
武士等の歴史上の人物をロールプレイする
のも、楽しいでしょうね。